切甘短編集!!



「…なぁるほどっ♪良くわかりました!!ほんとありがとーございます!!」

「…おう」

「…なんか今、ちょっと思ったんですけど…」

「?」

「…こんなことしてても、"両想い"にはなれないんですよね」


どくん───。

なんだよ…なんなんだ…。


「ちゃんと…相手と向き合って…自分の気持ちを伝えなきゃ、想いは叶わないんですよね」


どくん─。

どくん─。

知らねえよ…。

俺には関係、無いんだ。

どくん─。

心臓の高鳴りが、だんだん重いものに変わる。

それは俺の心を傷つけて──。

"傷み"に、変わるんだ。


「私、告白しようと思います」


ほら。


ゲンカイダ───。


ビリッ!!!


「っ!!!?ι」


ビリィッ!!ビリッ!!

目の前の光景にそんなに驚いたのか、荻田は目を見張って硬直している。

だけど俺はそんな荻田を無視して、無心で"その紙"を破き続けた。

パラッ…─


「はぁ…はぁ…」


俺は、荻田に預けた"答"の紙を、修復不可能なほどに細かく切り裂いた。

薄暗い教室に、白い紙切れがハラハラと舞い散る。


「どう…して……?」

「…知らねえ、よ」

「!香寺く、」


俺はその場から走り去った。

なんなんだ俺。

意味わかんね。

自分のことなのに、
全然、全然──。


バンッ!!!

一階昇降口のドアを開けて、グラウンドに飛び出した。

上履きのままだったけど、そんなのお構いなしだ。

疲れた足を引きずって、逃げるように校舎裏の中庭へ向かった。

広く部活動生で賑わったグラウンドは、余計に俺を、惨めな気分にさせたから───。


「はぁっ、はぁっ…」


──あいつはきっと、追ってこない…

追ってくるはず、ねぇんだ──。


「香寺くんっ!!!!」