>>>翌日
「…岡野」
「香寺?何だよ?」
「…好きなタイプは」
「好きなタイプ?んー…あれかな、普通な子!」
「ぶっ」
聞いた瞬間吹き出した。
あまりにあいつから、かけ離れてて。
「じゃー好きな色は」
「青と白」
「好きな食べ物は」
「辛いものなら何でも」
そこで俺は岡野から視線を外し、女らしい字で書かれたメモ用紙に視線を移す。
ちょっとためらってから、もう一度岡野に向き直る。
「…好きな奴は…?」
「いない」
即答した。
「…彼女は欲しいか、欲しくねぇーか」
「いや普通に欲しいけど。つかさっきから、何なのさ」
「…別に」
じゃああいつが告ったら…岡野の奴、OKする可能性もあるってことで──。
でもそれは、俺には関係の無いこと。
俺は至って部外者で、2人がどうなろうが、それを阻止することは出来ない。
だいたい、岡野にあんな女は相応しくねー…。
"相応しくない"?
そうだよ──
別に俺は荻田を好きなわけじゃない…。
だったら何だよ、
この違和感は…──。
>>>放課後
「香寺くん!!!」
「うわ、ちょっ!!?ι」
女子にタックルされたのって初めてだ。
「紙見ました!?聞いてくれました!!?」
「見てやったし聞いてやった」
「なるほど、結局聞いてくれたんですね♪ほんと素直じゃないですねナルシくん」
「ナルシ言うな。」
ほんとこいつは…。
「ほらよっ」
「おおおー!!!」
俺が渡した質問の"答"の書かれた紙を、大事そうに掴む。
目を輝かせて食い入るように文字を追う姿は、純粋なひとりの恋する乙女。
十人並みな顔のこいつに、ちょっと可愛いとか思ったのは俺の秘密。
そう───
"可愛い"だけ。
"好き"では、無いんだ──。

