沙織の声が遠くなっていく。
気づいたら、走り出していた。
やだ。
なんであたし走ってるの?
「はぁ…はぁ」
なんで息が苦しいの?
「うっ…ふぇ、」
なんで…
泣いてるの……
「あれ、りんチャン?」
「!」
「やっぱり…!!泣いてんの!!?」
「…な……の?」
「え?」
「にいた…好きなコ…いるの…?」
「…りんチャン?」
あたし馬鹿…。
新太困ってる…。
なんてこと、言ってるのよ…。
これじゃまるでヤキモチ…
……ヤキモチ?
あたし………──。
「あれぇ?杉原くん?」
「綺奈子(きなこ)!」
!!!
「何してるのぉ?もうすぐ授業始まるよぅ?今日"先週の土曜日一緒に書いた"レポートの提出日でしょぉ?」
"先週の土曜日"…?
その日は…確か、サッカー部は午後いっぱい練習だったんじゃ…。
そして、新太の今朝のセリフを思い出す。
『りんチャンの為なら部活なんてサボる』
=(つまり)
"女の為なら部活をサボる"?
「…新太そのコが好きなんだ…?」
「っはぁ!!!?ι」
今のあたしの言葉は、幸い"綺菜子"さんには届いていなかったようで、きょとんとした顔をしていた。
…可愛い。
「っ邪魔してゴメン!!!」
「りんチャン!!」

