そして、私は足を止める。



 この声はきっと・・・アイツ。


 少し重みのある、でもどこか安心
 出来るような声。

 
 私はこの声を何度も聞いてきた・・・


 辛いときも楽しいときも嬉しいときも。
 どんな時だって。


 でも、今は違う―――・・・。




 「ぉい、夏希。無視すんな。
  こっち向け。」



 今は、私の中にあの声はいない。


 
 私は、アイツの言葉に答えもせず
 止めていた足を前へ進める。


 
 お願いだから、帰って・・・。
 私を、ほっといて!!!!!!!!!
 


 「真樹っ!夏希はもぅあんたと何の関係もないの!だからお願いだから夏希のことはほっといて!」



 
 奈々が真樹に私が思っていた言葉を言ってくれた。



 真樹というのは、私の中学生の頃の元彼。
 私の世界1大嫌いな人。

 ―――そう、私の人生を狂わせた男。