Ray ~破滅~


『マジで?やっぱり礼兄って凄いな』


凛雄は苦笑いのような声で笑って、そう言った。

どうやら、完全に誤解しているらしい。

俺は確かに、『ウザい』とか『憎い』とかそういう気持ちも分からないけれど、『楽しい』とか『愛おしい』とかそういう気持ちも分からないんだ。

だから俺が、優れているということにはならない。

普通の人間がそのような感情をどのようなバランスで保持しているかは推測できないが、俺の場合はゼロ。

つまり、これまで一度だって揺らぐことのない均等を保ってきている。

ただ、それだけだ。


「そんなことないけど。とにかく、帰って来いよ。母さんには、俺から話しとくから」


俺は凛雄を宥めるようにそう言った。

俺の演じる俺は、もしも感情を一般的な人間の感覚で『善』と『悪』に分けるなら、完全に『善』のほうに傾いていた。

というより、完全にそちらしかなにも乗っていない状態だ。

しかし、人間はそろそろ気づくべきだ。

そんな人間、存在しないと。


『分かったよ。礼兄がそう言うなら』


まだ完全に騙されている凛雄は、諦めたようにそう言った。

その言葉を聞いて俺は、俺よりも凛雄のほうがずっと素直だと思った。


俺の演じる俺に比べられていつでも生きてきた凛雄は、おそらく生まれてこの方そんなこと言われたことはないだろうけど。