「それでは多数決の結果、後期級長は前期に引き続き光野くんにお願いしようと思います。よろしくお願いします」


女子の前期級長だった上原紅美(うえはらくみ)が言った。

多数決のため、本人にも分からないように上原が男子の、俺が女子の多数決を取ることになったんだ。

別に、俺は何人が手を挙げたかとかどうでもいいけど。

そもそも今やっている多数決自体、どうでもいいんだ。


「がんばります」


がんばります・・・か。

そんな言葉、よく言えるな。


自分で自分を、そう非難している声が聞こえる。

本当の俺の声だ。



俺は学校でも、周りに好かれる優等生を演じていた。

友達も多い。

美人と評判の彼女も居た。

成績だっていつもトップクラスに入り、先生からも一目置かれている。

それでも天狗にならず、協調性を持って謙虚に生きている。

俺は周りの望む、俺になっていた。

一般的な人間にとっての、理想的な人間だった。


俺はそうやって、本当の自分は隠して、完璧な人間を演じていた。



誰もがそんな俺の演技に騙され、俺を信頼した。

しかしそんなもの、俺にとってはなんの価値もないものだった。


無駄だった。

世界のすべてが、どうでもよかった。