自分がどうしてそんな人間になってしまったのかは分からない。

いや、どうしてなんていう問い自体おそらくは意味を持たないのだろう。

理由なんて、あるはずがないのだから。


「礼くんは素直で、本当にいい子ね」

昔からそう言われてきた。

別に、その言葉に不満はない。

そう言われるように、生きてきたのだから。


そう言われて、母さんはいつも嬉しそうだった。

自慢の息子だと言っていたところさえ、見たことがある。


ふざけた話だ。

素直だなんて、俺を表すのにそんなに不適切な言葉はない。

俺は幼いころからすでに、自分の本性を隠して生きてきた。

周りの言う「いい子」を演じてきた。


ただ、周りの望むとおりに。



だけどそこに、本当の俺の姿は欠片もなかった。