尚子は絵を描くのが得意だった。
写生会では金賞をとってみせた。
尚子の人生初の快挙に、両親は泣いて喜んだ。
家にいてもひたすら大きな画用紙に絵を書き続ける尚子を見て、尚子の父親は
「尚子は本当に絵が好きなんだな。 今度、美術館に連れていってあげよう」
と提案したが、尚子は丁重にお断りをした。
「得意」というだけであって、「好き」なわけではなかったのだ。
ブスで勉強もできない自分が大人になった時
いい会社にも入れず、結婚もできない可能性を考えた上で、
その時は漫画家にでもなろうと保険をかけていたのだ。
なるべく一人で家でできる仕事がよかった。
自分がブスであることを気にしなくて済むからだ。

