「で?どこ行くん」

サキは暇をつぶすように、伸びをしながらそう俺に問いかけた。

俺は困った。
目的地など最初からなかった。
しいて言うなら、サキの行く所を見てみたかっただけなのだ。


「ああ、えーと、この先のゲーセン…」

この方向に寂れたゲームセンターがあったのを思い出して、俺はとっさにそう答えた。
そこは、動作の遅い昔のアーケードゲームだの、年季が入って音の外れたダーツだの、そういう、どうしようもない類のゲームがある店だった。
もちろん、そんなゲームセンターで遊ぶ気などない。

「ゲーセン?」

サキはまたちょっとこちらを振り向き、大きな目をちょっと細める。
そうして、何か言いかけたが、またくるりと前を向いて歩き出した。



重い空気の中をしばらく歩くと、三つに分かれた道の真ん中の先に、ゲームセンターが見えてきた。
やはり、今では遠目に見てもどことなく悲しい感じのする、古代の産物だ。
営業しているのかどうかも危うい。

しかし、一度言ったからには仕方ない。

行くんか、行かへんのか、と問い詰めるようなサキの視線に耐え切れず、俺はゲームセンターのほうに少しだけ足を進めた。