しばらく黙っていたサキはひどく苛立った様子で、形のよい脚を止め、くるりと振り返った。ツインテールが肩の上で踊る。
「何の用?」
瞳が静かに燃えている。
背後の足音にずっと苛立っていたのだろう。
「ああ、…いや、別に」
「あっそ」
俺がしどろもどろになって適当な相槌を打つと、驚くほどあっさりとサキは踵を返した。
さらりと髪が風になびく。
「女の子の後つけるんなんか、やめた方がええんちゃう?」
サキは俺に構わず歩き出した。
どことなく優雅な身のこなしは、蝶を思い起こさせた。
「あー、うん。いや、今日は俺、こっちやねん」
俺はサキの進行方向を指差す。
サキはちらりとこちらを見て、ふうん、と唸ると、興味なさげにまた歩き出した。
