全部、君だった。



「まだ外周してるんかな。
先輩来てないよー」


加奈子が窓の外を覗きながら言った。


「さっき終礼終わったばっかだよー?あと1時間は絶対来ないって」


加奈子がつまらなさそうに頬をぷくっと膨らませた。


「ねー、雪枝はいつから桐山先輩のこと気になってたの?
全然そんなそぶり見せないからびっくりしたよ」


加奈子が窓から離れ私のとなりに座る。
ふわっとコロンの香りが鼻をかすめた。


「んーあんまり覚えてないなぁ…気付いたら気になるみたいな」





うそ。


本当はちゃんと覚えてる。


きっかけはあの帰り道。

あの日、桐山先輩は確かに私だけのために遠回りして帰ってくれたんだ。


別れ際の赤く染まった先輩の顔…

きっとすごく恥ずかしかったんだと思う。


いつも無愛想で怖い先輩が見せた優しさ。


少しくらい、独り占めしたい。



この気持ち、何て言うのかな?
どうやって表現したらいいかわからないや。




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