全部、君だった。



「あのさ、雪枝…話あるんだけど…」


部活の合間に、マネージャー仲間の加奈子が申し訳なさそうに話し掛けてきた。


いつも元気でオカン気質な加奈子とは別人のようだ。



「うん?どうしたの?」



「実はさー、好きな人…できたんだぁ」


なるほど。

頬をピンクに染める加奈子がかわいかった。


「そっかぁ…どんな人?」



加奈子は周りを気にするようにキョロキョロし、そして小声で一言……


「……宅間先輩…」


「えっ…」


加奈子の一言に絶句してしまった。


宅間先輩はやはりバスケ部の一学年上の先輩。


背はそれほど大きくないけど、足が速くて頭の回転も速く、チームの司令塔としてなくてはならない存在だ。


そして無愛想な先輩達の中ではわりと、私達マネージャーにも気を使って話し掛けてくれる優しい人。




でも…




宅間先輩には彼女がいる。



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