そこらじゅうで痛みを訴える身体を叱咤し、起き上がる。


薄暗いところを見ると、トラックのライトは消えているようで、明かりという明かりは一切無い。
雨とそれもあいまって、視界がぼやける。


未だ状況が理解できていない頭を何とか活動させ、ふらつく足に力を入れる。


ゆっくりと立ち上がると目眩がした。

胸がむかむかする。
呼吸がしにくい。
鼓動が全身を粟立たせる。

この不快感は何だ?


訳が分からない衝動に駆られ、真斗は走り出した。

先刻まで絢音と話しながら歩いていた場所まで。


「っ、」


喉が塞がれたように声が出ない。それどころか、音さえも出ない。


その赤を見たからー…。




絢音が倒れていた。

真斗の視線の先で、横たわっているのは、紛れもない絢音であった。


絢音の元に駆け寄りたいという意識に反して、真斗の足は自然と後退を始める。

絢音、絢音!


「っあ、や…」


何度も心で呼び掛けて、やっと発音できたのはこれだけ。

真斗は崩れ落ちるようにして地面に手をついた。

不意に身体がまた痛みだした。

だが、こんな痛みなど絢音の痛みに比べたら何てことない。


そう、絢音はもう…。


真斗は最悪の考えを振り払うように頭を振り、地の果てにも届きそうな程、絶望に満ちた叫びを上げた。