「っ真斗!!」


ネックレスを胸に抱いて安堵していた真斗は、背後から聞こえた悲痛な叫び声に顔を上げた。

上げた瞬間、差している傘の向こうから異様に明るい光が漏れていることの気づき、傘の位置を変える。


「危ない!!」


絢音の声と前方のトラックのクラクションの音はほぼ同時で。けれど絢音の叫びは鮮明に耳に届いた。

今でもはっきりと思い出せるほど、鮮明に。


雨のせいで辺りが薄暗く、トラックのライトが目に辛い。
腕でそれを遮断する。


もう終わりだ・・・。


そう思った。実感は無かった。ただこれから自分は死ぬのだという漠然とした感覚があるのみ。


足を動かす気にもなれなかった。
いや、本当は動かせなかっただけなのかもしれない。
弱虫で情けない自分。


心の奥で命を諦めている己が醜くて、無様で。
けれどどれだけ醜くても生きたいという思いも確かに存在していて。

自分の本当の気持ちが分からなかった。