「…ごめん」
絢音の両親の形見であろうネックレスを無碍に扱ったことへの謝罪。
「いいよ。それより雨、濡れるよ?」
「…うん」
そう言って絢音は笑顔を見せた。
こんな時まで他人の心配か。
真斗にはその笑顔が無理して作られているものに見えて言葉を無くした。
無理しないで。
たった一言が言えない自分に腹が立つ。
拳を握ると塊となったネックレスがしゃらんと音を立てた。
それが合図になったように真斗は自身がまだネックレスを持ちっぱなしだったことに気付き、握りしめた拳を絢音に突き出した。
真斗の視線に気がついた絢音は歩きながら振り返り、受け取ろうと手を差し出す。

