「絢音。いっしょに帰ろう」
八年前、真斗は絢音を一人にするのが恐くて家までの道のりを一緒に帰るように誘った。
幼なじみなので家は近いから日頃からよく帰っていたのだが、ここ最近は意識して誘うようにしていた。
この時の絢音はとても不安定で暴れたりはしないものの、放っておけばいつ壊れてしまうか知れたものではなかった。
それもそのはず。
彼女の両親が飛行機事故で二人とも亡くなったのだから。
一緒に帰ろうという真斗の言葉は拒絶さえされなかったものの、絢音は首を縦に振っただけで瞳は虚ろだった。
「なぁ絢音。今度おれん家にごはん食べにこいよ。お母さんが絢音呼べ呼べって煩いんだ」
「…うん」
「その日はとびっきり美味しいカレーにするってお母さん言ってたんだ!」
「……うん」
並んで歩いていても絢音は数歩遅れてくるし、真斗のかける言葉には生返事しか返さない。
それが真斗にはもどかしくて、幼き真斗の悪戯心を刺激した。
「…それ、何?」

