はぁはぁと辛そうな息遣いが聞こえる。

それは一向に止む気配がなく、ずっとそこにある。


耳障りだと認識した途端、その耳障りな息が真斗自身のものであるのだと知った。

真斗は一面黒の、深い闇色しかない場所に一人で佇んでいた。

その中を真斗はひたすら走っていたのだ。


辺りを見回して見ても、闇色以外の色は無く、呆然と立ち尽くすばかりである。


出口の無い闇を馳せる程に怖いものはない。

終着点が無いのだから何をどうすれば良いのかも分からない。


「嫌だ」


真斗は無意識のうちに感じていた感覚を零した。


嫌だ。ここには居たくない。


そう思って足を踏み出した直後、足元がばらばらと崩れていく。

あまりに突然のことで驚倒している真斗をよそに、地面は確実に崩壊を始め真斗を引きずり込もうと奮闘している。


最初は闇に呑まれまいと足掻いていた真斗だったが、足元から漏れているものが闇だけではないことに気づき、動きを止めた。