俯いてただただ時が過ぎるのを待つ。


けれどそれは叶わず、真斗の頬を温かな何かが覆った。


はっとして顔を上げると心配そうに眉を歪める早綺がいて、真斗は二度目の息を呑んだ。


「どうしたの?」


怪訝な顔とは裏腹に声音は優しく真斗を耳を打つ。

どうしてだろう。

早綺が話しかけてくれるだけで心が安心する。
身体が温かくなる。

真斗の悪寒はいつの間にか消えていて、今は身体の芯からじわりと熱を持っていく感覚を覚えた。


急に早綺に触れたい衝動に駆られて頬に当てられている早綺の柔らかな手を自身の手で包み込むように触れる。

一瞬早綺がびくりと揺れ手を引っ込めようとしたが、真斗が離すまいとしっかりと覆っているのを見て観念したのか、大人しくなった。


「…早綺」

「なに?」


真斗が小さく呟くとすぐさま早綺からの返答が帰ってきた。


「ありがとう」


真斗はふわりと笑い早綺の瞳に自分の瞳を合わせる。

絡み合った視線は暫く放れず、早綺が微笑を返すとともに外された。