「…絢音」


ここには居ない、居てはいけない人物が真斗の横で微笑みを浮かべていた。


何で笑っていられる?


何の悪意も感じられない、ただ純粋な笑みを向けられて真斗は戸惑う。

全ての元凶は紛れもない真斗なのに、何故絢音は穏やかな出で立ちでいられるのだろう。


けれど瞬時に芽生えた疑問は口にすることは出来なかった。


結局真斗は自分が可愛いのだ。
だから絢音を問い詰めることが出来ないでいる。
その笑顔の意味を訊くことさえ出来ないでいる。


酷く自分が滑稽に思えて真斗は絢音から視線を外した一一…