真斗はむっとして早綺を置いて歩き出した。

お化け屋敷は恐くはない。暗い所が怖いのだ、と声を大にして言いたい。
けれどそれを口にしたら負けのような気がして、言うのを止めた。


「置いていくぞ」


言うと背後からぱたぱたと音がして真斗の隣に早綺が並んだ。

何故か満ち足りた笑みを浮かべて。








「あと少しだね」


お化け屋敷の列に並びながら待っていると、隣で早綺が言った。

予想通りというか、もっともというか、お化け屋敷の列はまさに長蛇の列であり、時間単位で待つのは当たり前だった。


それが、あと数人で真斗達の番だった。

だいたい十分おきに中へ案内される客だが、逆に出口から出てくる人は数える程であった。

入口と出口が隣接しているだけに、その差は一目瞭然だった。




そして今、真斗達の前のペアが中に案内された。

いよいよ次だという時。
真斗の腕を誰かが掴んだ。温かで小さな、手。