一一…という一悶着があったため、真斗と早綺は今お化け屋敷の前に並んで立っている。

このお化け屋敷は、あるアミューズメントパークの一角にあるお化け屋敷で、毎年幅広い世代から人気を博しているいわゆるお化け屋敷専門、といった所のようだ。

今年は巨大な日本田園に佇む屋敷を舞台に設計されているらしく、建物の古風な造りが余計恐怖を煽っている。


二人して見上げている屋敷は荘厳で、いかにも"それ"らしい。


「じゃあ早綺行こうか」


今日くらいは名前で呼べと言われた名で呼ぶと、早綺が瞳に楽し気な色を灯して振り返った。


「お化け屋敷が苦手な真斗のために、私が一肌脱いであげるね」


端から見たら、ただの可憐な少女の無垢な笑顔のはずなのだが、真斗には笑顔の裏にあるものが伝わってくる。


こいつ…。確実に俺を馬鹿にしてる。


まさにその通りだ。
筋肉はしっかりと笑顔の形になっているのだが、瞳が明らかに馬鹿にしている。

からかうような視線を向けているのだった。