今日から執事



真斗にはそれが過去を忘れようとした罰のように思えて、ふと窓から見える空を仰ぐ。

視線を追うように早綺も空を見上げた。


太陽があと数刻で沈んでしまうであろう景色は、壮大で心地よく、真斗を泣きたい気分にさせる。


神が過去を忘れるなと言うのなら、忘れはしない。

神が人を愛すなというなら、愛しはしない。


真斗にはそんな臆病で卑怯な生き方しか、出来ない。


一一それでも、早綺の隣にありたいと思うことは我が儘で、いけないことなのだろうか?


やるせない思いに答えを授けてくれる人はもちろんおらず、真斗はひとり途方に暮れた。


程なくして太陽は完全に隠れ、静かな夜がやってきた。