驚きを隠せないまま、付いて行くと階段から一番遠い部屋に通された。

ざっと二十五畳くらいの部屋に小さめのテーブルと椅子、洋ダンスにテレビ。
それから、少し小振りだがシャンデリアもある。勿論ベッドも備え付けられている。


広っ!!これ、部屋か?


またしても屋敷を初めて見たときと同じ反応の真斗。
ここまできたら、慣れている頃かと思うが、どうやらそうではないらしい。


「このが桐谷さんに使って頂くお部屋になります。
本来なら使用人は一階で寝泊まりしていただくのですが…私は違いますが。今回は会長の紹介とあるので特別に、ええ、特別にお部屋をご用意致しました」


“特別に”を強調する松山の目には嫉妬とも言えぬ炎が。
真斗は初めて松山に恐れの感情を抱いた。表面的には物凄い笑顔なだけに余計恐ろしさが増す。

使用人にしては良い部屋なのか、とぼんやりした思考の中で考えていた。

真斗は半分訳も分からぬまま、荷物を床に置く。


「では、早速仕事に入って頂きたい所ですが、まずはこの服に着替えて下さい」


そう言い松山は、一体どこに隠し持っていたのだろうか、何処からか燕尾服を取り出した。

どこかの漫画に出てくるキャラクターの様な能力に真斗は驚倒するしかない。


「サイズはこちらで調べたので平気な筈ですが、何かあったら申し上げて下さいね」


私は外に居ますので。
と言葉を残してノブを回す音と共に部屋を去っていった。