「…これは?」


早綺が真斗に向き直って問いかける。

けれど真斗は何も答えず、短く「ああ」と呟くだけ。


このネックレスにどんな意味があるのか、早綺は知りたいのだろう。

実際、奇異の視線を向けている。


真斗はゆっくりと今は早綺の首にあるネックレスを指で絡みとる。


「これは、俺の後悔と覚悟の結晶です」


そして早綺への誓いの証でもある。


今はまだ伝えるべき時ではない。

このネックレスの意味を。
真斗の言葉の真意を。


「俺の過去の一部を早綺お嬢様に預けます。
だから、笑って頂けますね?」


最初の言葉は己に向けているようにも思えたが、最後の言葉は完全に早綺に向けられたもの。


言いながら、過去のことなどとうに吹っ切れていたと思ったが、どうやら思い違いだということが判明した。
なぜなら早綺に向けた笑顔が心からのものではないと気付いてしまったから。


今まで目を逸らしていた罰かもしれない。

こんな形で過去を思い出すとは思ってもいなかった。