早綺はまるで石像にでもなったかのように固まっていて、瞬きひとつしない。
けれど次の瞬間、破顔した。
それは見ようによっては泣きそうな笑みにも見える、とても危うい笑顔。
「こんな私で、いいの？
私は真斗に何もしてあげられないのに…」
小さな呟き。
自らに語るようにぽつぽつと漏らす。
泣きそうな笑みはやがて泣き顔へと変わる。
嗚咽なく泣く姿は、痛々しい。
「見返りなんて求めていません。ただ、早綺お嬢様の傍に、自分が居られればそれでいい」
真斗の本心からの思い一一願いは、しっかりと早綺に届いた。
「なら、私に証を頂戴」
今度こそ何の曇りのない、屈託のない笑みを湛えて早綺は言う。
頬の涙のを拭いながら笑う様は、今にも倒れてしまいそうだが、けれどそれでいて、何処か強い意志を秘めていた。
