ゆっくりと、自分の言葉を噛み締めるように、ひとつひとつ紡いでいく。

昴兄様の裏切り。
"金目当てだ"という昴兄様の言葉。

そして何よりも自分の不安な気持ちを全て打ち明けた。


早綺が話している間、真斗はただ無言で、真剣に聞いてくれていて。

自分はこんなにも温かな優しさを向けられているのだ、と気付いた。


「もしかしたら、真斗も、その…。
私に近付いたのはお金目当てなのか、とか色々思って一一」

「それで俺を避けてたのか?」

「……うん」


怖かったのだ。
真斗と面と向かって話す事も、自分のみすぼらしい顔を見られるのも。

だから、避けた。

そして現実から逃げたのだ。


改めて後から考えてみると、うじうじと悩んでいた自分が情けなくなってきた。

謝罪と感謝の気持ちを述べようと、真斗を見上げると、何故だか真斗はキョトンとした表情を浮かべている。


そして次の瞬間、口を開くと軽い声音でさらりと言い放った。


「そんな事で悩んでたのか?」