『新崎昴』


その名を聞いた早綺は大きく身体を揺らし、動揺を露わにした。

どうやら、真斗の読みは核心をついたらしい。


「何があったか、聞かせて頂けませんか」


真斗の悲願の声。
けれど、依然として早綺は言葉を放さず首を横に振るばかり。

どうする?
どうやって早綺の心に巣くう闇を取り除く?

こういう場合は下手に優しくすると、余計に話さなくなるだろうか。

ならば、もう最終手段しか無い。


真斗は柔らかなソファーから立ち上がり、ベッドまで歩み寄る。

俯いたままの早綺の前に立つと、真斗が見下ろす形になる。

この後どうなるか検討がつかないが、覚悟はできた。

胸の中は早綺に対する罪悪感と、一筋の不安。

そしてこれからの真斗の行動で、この状態が良くなればいいという希望。

真斗は深く息を吸うと、はっきりと聞き取れる声で辛辣な言葉を放った。