暫く考える。

真斗が早稀を見詰めると視線を逸らさずに、真剣に見返してくる。

その瞳が彼女の意志の強さを物語っているようで、真斗は覚悟を決めた。


「分かりました。早稀お嬢様の頼み、聞き入れました」


普通を体験出来ないことは、確かに辛いかもしれない。
だから、真斗は応えるのだ。


彼女の視線を捉えて、真斗の誠意を込めた声で言うと、早稀は真剣だった顔を綻ばせて笑った。


もう、本当その顔やめて欲しい…。


彼女が何回か見せる無邪気な笑顔に真斗は心の中で人知れず呟いた。


「じゃあ宜しくね、真斗。私、貴方のこと気に入ったの」


声無き呟きを漏らしていることなど知らない早稀は真斗の手を取り、そう言った。


間近で見る彼女の瞳は淡い茶色で、その瞳は輝いていて今にも彼女の心の声が伝わってきそうだった。


“だから真斗は私のものね”


今にもそう言わんばかりの瞳だった。