扉が全開し、そこに人のシルエットが映った。

その瞬間、使用人たちが一斉にしかも優美に御辞儀をした。
あまりに突然の事で不意をつかれた真斗は慌てて腰を折る。
優美のゆの字も無いような御辞儀を。


「お帰りなさいませ。
遠方からお疲れでしょう」


チーフの声が聞こえて顔を上げると、そこには黒のシックなスーツを身に纏った男性と、それと対のような黒いパンツに、上は白地に淡い青で花をあしらった女性。

それからジーンズにTシャツというラフな格好の青年と、白いワンピースを着た、青年よりかは幾らか若い少女が居た。


見た感じからして、既に金持ちだな。


その人達を見た真斗の感想がその場に合っているか否かは気にしないとしても、確かに外見からして庶民とはオーラが違った。

雰囲気がまず優艶で、一つ一つの仕草がとても洗礼されている。

真斗ははっきり言って、少し関わり難い印象を受けた。


「やはり此処の空気は良いな。落ち着く」

「それは旦那様が天塩にかけて、お作りになられたからでしょう?」

「まぁそうとも言うな」


楽しそうに談笑しているチーフとスーツの男性。
旦那様と呼ばれた所を見ると、どうやら屋敷の所有者であり樫原財閥の会長であるらしい。

そして真斗の父親の友人でもある。


樫原一家は四人家族らしく、訊くところによるとここは彼らの別荘のようだった。

世間では夏休みに入ったから遊びに来たという感じだ。


樫原財閥に休みなんてあるのか?


凄く些細だが真斗には無性に気になった。