脱走犬物語

車がビュンビュンと音をならして、走っています。今頃けんちゃんやパパはボクを探しているのでしょうか。久しぶりに東京から戻ってきたというのに、ゴメンネ。悲しいけど、全然戻る道がわかりません。ごめんね。悔しいけど、ボクの耳や鼻は、もうほとんどダメになっているようです。目の前にぼんやり光る灯りを目指しながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ前へと歩いていきました。

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少しずつですが歩いていました。不思議なことに、こんなに遠くへ来たというのに、夜空に光る丸いお月様の位置は少しも変わりません。お月様の周りの、星は相変わらず元気に瞬いています。ボクは時々、公園の蛇口の水を舐めながら、彼らのことをひどくうらやましく思っていました。

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