「っ・・・」


玄関から出て来た人物に見つからないように、迷わず踵を返した私。



木陰に身を寄せると、前方の2人の行く末をジッと凝視してしまう。




宙を舞うようにドアが開いたあと、ランボルギーニ独特のエンジンがかかって。



軽快な発車音を轟かせながら、そのまま颯爽と駐車場を走り去って行った。




木に凭れていた身体を起こしながらも、先ほどの光景が目に焼きついていて。



いつしか小刻みに震えていた手が、モヤモヤした感情を助長してしまう…。




柔らかな表情をして、親しそうに話していた2人・・・




拓海…、助手席に乗ったヒトはダレ――?





「・・・っ」


貴方を信じているのに…、愛おしくて仕方がナイのに…。



どうして内心では、疑るような疑問が生み出されているのだろう。




ダメじゃない…、来社するなんて取引先の方よね…?



何考えているんだろう、ホント・・・




拓海キャッスルに背を向けると、そのまま来た道を辿って行く私。



貴方のイナイ社長室には、行く意味がナイから・・・