貴方にギュッと縋りつくと、優しく抱き締め返して貰えて。



ドクン、ドクンと心地良いリズムを刻む心音は、愛証を募らせるから。




貴方の隣で愛を誓い合える日まで、この福音は鳴り続くと思っていた…。





「ただ俺のほうは、暫く出張続きになるんだ…。

お袋の元に通うにも、実家に居た方が都合が良いし…。

互いに落ち着くまで、悪いけど待っていてくれる?」


隣席で長い足を組み変えると、革張りのソファがギシッと音を立てた。



流れるBGMのサックスのソロ曲が、音にのせて空気を浄化する中で。




「…うん、分かった」


コクンと首を縦に振ると、優しい瞳を見据えて笑い掛けた。



「やけに冷たいけど…。

俺と離れても、蘭は平気みたいだな?」


そんな私をクスクス笑うと、確かめるように尋ねられる。




「っ、そんな事ないよ…。

待ってるから…、拓海も頑張ってね?」


「あぁ、ありがとう」



我が儘を言って負担になりたくないと、不安に思いつつも。



少し覗かせた本音を、煌々とした笑顔が払拭してくれたから。



勇気を出して、言葉にして良かったと思えたの。