バーを出てランボルギーニに乗り込むと、再び轟音を響かせ始める車。
日付が変わった頃合いだというのに、街並みに静まり返る気配はナイ。
都会の喧騒と夜空とのコントラストに目を向けて、シートへと身を沈めた。
何となく…、拓海と会話が出来ないままに・・・
カジュアルなお食事を楽しんで、2人きりの空間に乗じてキスを交わす…。
苦しみに疼く傷アトが、消え去りそうなほどの空気が此処にはあって。
そんな甘くて、愛おしくて、幸せすぎる瞬間に齎されたの――
「蘭…、明日から出社しないで良いよ。
それよりも、東条家について知って貰いたい…」
「…東条家について?」
仕事の件はもう仕方がナイからと、敢えて触れなかった私。
それでも、突拍子の無さには驚いていたのだけれど…。
「あぁ、お袋が色々伝えたい事があるらしいんだ。
結婚準備とかで、どのみち忙しくなるし…」
「あ…、うん・・・」
拓海がサラリと発したフレーズで、ドクッと脈打つ心音。
結婚までのカウントダウンを、此処で刻み始めたように――

