開いた扉の向こうには、ソファに掛けて仕事をする桜井さんの姿があった。




「おっ、早かったじゃん?」


手にしていた資料を置くと、こちらに笑いかけていたのだけれど。




「悪い…、席外してくれ」


「…あぁ、分かった」


拓海の言葉でソファから立ち上がり、机上の物を素早く纏めてしまう。



そうしてドア付近で佇んでいる私たちの元で、一旦立ち止まった。




「蘭ちゃん、安心したよ?」


「あ…、申し訳ございません…」


「そんなの別に…って、もう行くわ!」


桜井さんの言葉に平身低頭で謝ると、何故か彼は慌てて退出してしまう。



バタンッ――

閉ざされた重厚な扉が、瞬時にピンと張り詰めた様相へと変えていた。





「来い――」


「・・・っ」


一言発したあとで、そのまま秘密の部屋のドアへと連れられていく。




ピッ――

指紋認証キーが解除されると、社長室より重厚な扉がゆっくり開いた。




バタンッ――

外部と一切の遮断をするように、扉が閉まる速さは忙しないけれど・・・