“うん、彼と結婚するの!”


そう胸を張って紹介出来ないのは、なぜ…――




「蘭、どうなんだよ?」


「・・・・・」


再度尋ねてきた涼太くんから視線を逸らすと、俯いてしまう私。



婚約者だと名乗り出てくれた貴方に、申し訳が立たなくて・・・





「…蘭の知り合いのようだが・・・

これ以上の詮索など、君には不要だろ?

もう失礼させて頂く――」


「はっ・・・?」


いつもとは段違いに冷たい、抑揚のない声色を響かせると。



訳が分からないという感じで、呆気に取られている涼太くん。




「蘭、行くぞ」


「っ・・・」


そんな彼を尻目に、肩を抱く手の力を強めて歩いて行く拓海。




ドキドキと高ぶる鼓動と、ギューッと締め上げられるように疼く鼓動。



触れている箇所が熱を帯びつつ、それらが犇めき(ひしめき)合っていた。




「早く乗れ」


路肩に停められていたランボルギーニへと、強引に押し込められると。



初めての荒い運転に、静かな怒りを感じ取る外無かった…。