ガヤガヤと煩い店内から街並みをボーっと眺めて、トキを重ねていると。



その喧騒を切り裂くように、携帯電話の着信音が鳴り響いた。




「っ・・・」


仕事柄…ではないけれど、瞬時に反応してしまうのが悲しい性で。



愛しい人専用の着信音となれば、なおさらのコト――




だけれどパチンと音を立てて、携帯電話を再びポケットに入れてしまう。



貴方からの電話に、出たくないだなんて…。




秘書失格…、ううん、投げ出した時点で社会人失格・・・



イヤなキモチだけが募り、鳴り止むのをギュッと眼を瞑って待っていた。






静まった携帯電話とともにカフェを出ると、再び喧騒に紛れ込んだ。



平日の昼間に街中を歩くのは学生以来で、何となく馴染めない気がする。




何も知らないアノ頃は、早く大人になって拓海に近づきたかったのに…。




近づいたと思えば遠ざかって…、キモチが通じた筈が不安に苛まれて…。




貴方の隣で私は、了見の広い大人になれる・・・?





「あれ、蘭・・・?」


え・・・?