こんなにも呆気なく、仕事を辞めて良いなんて・・・



私の仕事ぶりなんて…、やっぱりどうでも良いモノだった?




「蘭・・・?」


「っ、いえ…、かしこまりました…」


引き寄せられていたコトも忘れて、ビクッと肩を揺らしてしまう。



今のって、不自然じゃなかったよね…?




「佐々木さん、あとは安心して任せろよ?」


すると向かいに立っていた人から、宥められてしまって。



「桜井さん…、どうぞ宜しくお願い致します」


秘書から外れる悲しさを殺すように、精一杯の笑顔を返した。




彼の名前は、桜井 祐史(サクライユウジ)さん。



28歳ながらに総務部長を務めており、エリートと目されている。



そして拓海のブレーンと呼ばれ、将来有望視されているのだ。




「ハハッ、本当に律儀な子だよね」


そう言って笑う彼に、何処か寂しさを覚えてしまったの。




確かに新人の私の能力では、社長秘書は務まらないと思う…。



それでも、どうにかこなしていると過信していた自分は浅薄すぎる。




頑張っていると思っていた陰では、彼が動いていたのに――