寝起きの悪い私には珍しい動作で、拓海は眼を丸くさせているけれど。




「どうした?」


「だっ、だって…」


低血圧を打ち負かす言葉を投げ掛けたのは、どちらよ・・・




バッチリと覚醒した瞳で、ようやく寝室であろう室内を一瞥すれば。



広々したシンプルな家具に、私たちが今いるキングサイズのベッド。



ふかふかしていて上手く身体を沈めてくれる、この高級ベッドの感触は。



何となく、アノ社長室の秘密の部屋を髣髴(ほうふつ)とさせる…。




「気に入らなかった…?」


「え、ちが・・・」


色々思案していると、こちらの様子を窺い見てくる拓海に頭を振った。




「それなら、一緒に住んでくれる?」


「っ、ん…」


愛しい笑顔でまた涙が溢れつつも、今度はコクコクと首を縦に振って頷く私。





「もう…我慢の限界――」


「たく、ンッ・・・」


私の頬は両手でそっと包み上げられ、そのまま扇情的な瞳が近づいてくると。



自然と眼を伏せれば、温かくて柔らかな感触が唇全体を包んでいく…。