そのTS商事の融資などの件は、バトンタッチした桜井部長に任せるコトとなり。



彼から受け取ったキーを手にした拓海と、アウェイの社長室を退出しようとすれば。




「蘭っ…、待ってくれ――!」


「え・・・?」


ソファに腰を下ろしていた涼太くんに、いきなり呼び止められてしまった。



そのまま立ち止まった私たちの許へと、彼はそそくさと駆け寄ってくる。




「今度会う時は…友達だよな…?」


神妙な顔つきをしている涼太くんが、不安げに尋ねてきたのだけれど。




「へ?あ、あたり前だよ…!

ていうより、今までだって友達だよね…?」


「あ、あぁ…、そうだな…!」


「良かったー、凄く心配していたの」


「はは・・・」


変な聞き方をしてくれたのは、涼太くんらしい気遣いだったのだろう。




だって巻き込んだ私の方が、もう彼とは疎遠になりそうで不安だったから…。




そんな涼太くんと笑い合っていれば、グイッと腰元を引き寄せられてしまう。




「遠藤くん、今回は君のお陰で助かったよ。

蘭の婚約者として、礼を言わせてくれ…」


「ッ・・・」



そんな中でも愛おしい清涼な声色が、私の意識をすぐに攫ってしまう・・・