“大事なモノ”というフレーズで、またしても頬を涙が伝ってしまうけれど。



触れられた先へと熱が一気に放たれるように、ドキドキと鼓動が囃し立ていて。



恥ずかしながらも、久々の拓海の感触が嬉しさを蔓延させていくの・・・




「ハァー…、蘭ちゃんの事になると見境なさすぎだ…。

まぁ良い…、此処からはバトンタッチしろ。

TS商事さんとは今後について色々と、お話しなければなりませんしね?」


大袈裟な溜め息をつく桜井部長は、すっかり意気消沈の後藤社長を一瞥した。




「あぁ、あとは頼んだ。

後藤さん、“それなりの覚悟”はなさって下さいよ。

ソイツは見た目以上に、相当なクセ者ですからね…?」


「・・・・・」


私の身体ごとゆっくり立ち上がると、拓海も同様に標的を見下げているので。




「蘭…、ひとつ聞いて良いか?」


「ッ、は、はい…っ」


恐る恐るそちらを見れば、訝しげな顔つきをした後藤社長と視線が合致した。




「もし俺が…、オマエの幼馴染みだったら…。

東条と同じように、一緒の道を選んでくれたか…?」


「っ・・・」


不意に尋ねられた言葉と向けられる悲しい瞳に、思わず息を呑んでしまう…。