不安の色を浮かべるブラウンの瞳に、心配はイラナイと伝えようと笑い掛けた。




「私…、強くなるから・・・

だからもう、止めて欲しいの・・・拓海まで、苦しませて…ごめんなさい」


必死で言葉を紡ごうとすればする程、頬を伝う涙と嗚咽がソレを阻んでしまう…。




「蘭…、分かったよ」


「ひっ、く・・・っ…」


そんな弱虫な私を優しく笑いながら、温かい手でギュッと抱き寄せてくれた。



トクン、トクン…と、一定のリズムを奏でる鼓動はすぐに安心感を齎すの…。




「…蘭、それで」


周りに人がいるのも気にせず、私を引き寄せたまま話し始めようとしたトキ。



ガチャリッと音を立てて、社長室の重厚な扉が突然に開かれた・・・




「ったく…、いつになれば出番が来るんだよ?

来てみりゃ、ただノロけてやがるし…」


呆れた声でボヤきながら、コツコツと革靴の音を立てて歩いてくる人物。




「…祐史がタイミング逸しただけだろ。

大事なモノを優先して、何が悪い?」


「ッ――!」


フッと一笑して返したあと、私を胸の中に収めている状態を幸いとして。



愛おしいヒトは私の頭の天辺に、チュッとリップ音を響かせてキスを落とした。