秘書半人前の私でも分かる…、A銀行からの融資が停止すれば・・・



悠然と構える拓海が差し向けたモノには、隙など見つかる節もなくて。




「東条社長、どうか…――!」


我慢ならずに席を立った立川元部長が、どうにか拓海を牽制しようとすれば。




「悪いが、今は経営者同士での話し合いの場だ。

口を挟まないで欲しい」


「っ…、かしこまりました」


手をスッと前へ掲げると、ソレさえも容易くストップさせてしまう剣幕で。




「冷静沈着で頭のキレる貴方なら、結論はもう出ていますよね…?」


「な、にが言いたい…」


そのまま一点に捉え直せば、なおも睨みを利かせる標的に一笑した。




「貴方のご希望通りに、東条が動けばどうなるのか・・・

A銀行に融資停止を取り下げる事も、はたまた会社を潰す事も簡単なモノ…。

すなわち後藤家の権力など、既に東条家の手の内というコトですよ」


「き、さま…、卑怯なっ――!」




「その言葉…、そっくりお返しいたしますよ。

蘭をはじめとして、立川や遠藤くんにした事への当然の報いでしょう。

東条に伝わる訓辞に、“目に見えぬ物こそ、真の生きる糧”という一文があります。

人の心は物ではない…、弱者に対して、権力や金を振りかざす事こそ愚かだと…。

貴方と対等に位置する者として、相応に実力行使させて頂きましたが・・・

傍若無人の身勝手さが招いた、必然的な末路ではありませんか――?」



淡々と話す拓海は泰然としていて、東条の風格を漂わせていた・・・