堕ちるトコロ…、奈落の果てのような言い方に、苛立ちが募っていくけれど。



高圧的でいて、獲物を完全に仕留めるかのような瞳から逃れる為に。



恐怖に慄き震え始めた身体を、再び革張りのソファへと身を沈めてしまう…。




「また悲劇のヒロインぶった演技で、男を騙すつもりか…。

妾から躍進するくらいだ、何でも卒なくヤレるよな?」


「っ…、ち、がいます」


返す反応すべてが気に入らないのか、吐き出される言葉は下劣極まりナイ。



それでも膝上で拳をギュッと握り締め、彼の鋭い刃の攻撃にグッと耐えていた。



怒りの矛先がこちらに向けられるのならば、ソレが最良だと思ったからで。



何処にも逃げ道などナイからこそ、盾になって愛おしいヒトを守りたいの…――




「とんだ茶番に付き合わされて、迷惑千万でしかないな…。

いつになれば、舞台の幕引きをするつもりだ?」


「ッ――」


だけれど後藤社長には通用するハズもなく、私の態度を満足気に眺めたまま…。




「前にも言った筈だ・・・

“気に入らなければ敵に回る”のが、俺の信条だとね――」


劣勢で対峙する最中、私を忌み嫌うと伝わってくる声色で齎された挑戦状。



凄く悔しくて、腹立たしいのに…、何も言い返す術は見つけられナイ…。



「…それはどうでしょうか――?」