ミストを纏った私を確かめるかのように、グッとキョリを縮めたあとで。



「これでもう、大丈夫だろ…」


「――っ」


自嘲した笑いを浮かべつつ、どこか満足気な表情を見せてくれる拓海。



桜井さんからフレグランスをかけられて、数時間が経過していたせいか。



それともキモチの強さからか、身体はもう拓海の香りで占領されていた。




「…ありがとう、ございます…」


「そう言って貰えると助かるな?」


「ッ・・・」


たとえ義務的だとしても、笑い掛けられれば顔へと熱が集中していく…。



何も知らナイ貴方から齎されるモノに、どうしても戸惑ってしまうけれど。



それでも愛おしいヒトの存在と香りで、強くなれそうな気がするの…――






「東条くん、どういうつもりだ?

わざわざ“大事な秘書まで”同行させるとは、俺への当てつけか――?」


「・・・っ」


闇に葬ったアノ日以来となるTS商事へ、恐怖と戦いながらやって来たものの。



表裏のある人物と対峙をすれば、冷たい言葉と視線がグサリと突き刺さった…。




後藤社長が齎すモノが、何かをかき乱す予感だけを走らせつつ・・・