無意味に近づくキョリと甘い香りで、ドクドクと脈打ち始めた鼓動が煩くて。
このまま首筋に唇を寄せんばかりの拓海に、身体が硬直して動けナイ私・・・
「アイツの香りなんかつけて、何してたの?」
其処からキョリを置いたのも束の間、今度は眼前へ迫るほど顔を近づけてきた。
さらに今日は巻き髪を施した私の髪を、しなやかな指で弄ぶように触れてきて。
「…佐々木さん?」
「っ・・・」
勘違いしたい程に扇情的な瞳を向けてくるから、思わず息を呑んでしまった。
桜井さんが言っていた“細胞”というフレーズが、無用な期待に変わりそう…。
「し、仕事のお話ですし…、これは、振りまかれたんです…。
桜井部長が、その、面白がって…」
対峙し続けるコトなどムリで視線を泳ぐように、たどたどしく答えれば。
「へぇ…、アイツとデキてるんだ?」
「っ、ち、がいます…!」
薄笑いを浮かべつつ尋ねられた悲しいフレーズによって、瞬時に視線を戻せば。
清涼な声色とは対照的な、あまりに哀愁を帯びたブラウンの瞳と合致した…。
「…何なんだろうな、この感じ…」
「た…っ、しゃ、社長・・・」
フッと切なく一笑されては、思わず愛おしいその名を呼びそうになるの。
すべての事実とキモチを伝えられれば、抱き締められるのに…――

