きっと此処でNOを告げていたとしても、彼は咎めなかっただろう…。
だけれど避けたり逃げたとしても、何処かで必ず廻りあうのが人生で。
辛くても拓海と生きたいと選んだのは、誰でもナイ、私だから…――
「そうだ、蘭ちゃん!
ちょっとだけ目、閉じてくれる?」
「え…、はぁ・・・」
シリアス調の雰囲気を一蹴させると、いつもの柔和な桜井さんに戻っていて。
テンポの速さに訳も分からぬまま、生返事をしつつ眼を閉じたのだけれど。
「コレでよし!と…」
「…わっ――!」
プシュッとした噴射音で眼を見開けば、私の身体全体は香りの霧雨に包まれて。
体温で香り方は違うといえど、これは明らかに桜井さんの香りだと察しがついた。
「イイ材料になると良いんだけどなぁ…」
「あの…、意味がよく…」
ウンウン頷く彼を尻目に、自身に馴染んでいく香りがイビツに思えていたのに。
「大きな賭けを仕掛けたから、あとは宜しく頼むよ…?」
有名ブランドのフレグランスの瓶を手に、ニヤリと笑う彼に絶句させられた。

