愛おしいブラウンの瞳は逸らしたくなるほど、真っ直ぐに私を捉えていて。



頬を包むようにして離れナイ大きな手が、問い掛けから逃してはくれナイ。



静かなエンジン音で走行する車内では、ピンと張りつめた空気が流れてゆく…。




「…な、泣いたりしません…。

ほ、んとに…ちょっと寝不足で――」


「この顔を見て、心配しない方がおかしいだろう。

それとも俺が心配するのは…、迷惑だった?」


綻びだらけの言い訳を封じるように、重ねられた言葉と哀愁を帯びた瞳。



ソレが思わず片頬に置かれた手に縋りそうな程、キュッとした痛みを作り出す…。




「…っ、い、いえ・・・

っ、社長にご心配頂けて、光栄ですし…嬉しいく思います…。

ですが、本当にただの寝不足ですので…」


それでも“誓い”があるから、笑って誤魔化すコトが私のプライド。



いま貴方を苦しめた分だけ笑顔を見せて、1人でも強くなる為に…――




「…分かった、無理はしないでくれ」


ひとつ呼吸を置いたあと、ようやく納得して頬から手を離してくれた拓海。



包まれていた熱はスーっと冷めて、代わりにエアコンの風が頬を掠めていくけれど。




「はい…、ご心配ありがとうございます。

今日からまた…、宜しくお願い致します」



此処で泣いてはダメ…、これからが本当の戦いだから…――