専属運転士さんと私と拓海…、3人で構成されている密室空間の中。
少し伏し目がちに、チラリと隣に座る拓海の表情を窺い見てしまう…。
光沢を放つシルバーのネクタイを締めて、圧倒的なオーラを纏いながらも。
ダークグレイのストライプスーツで、整った顔立ちを際立たせている拓海。
けれど…、やっぱり私の“変化”には気づいてくれナイ・・・
いつもは拓海の指示を受けて、秘書にしては地味なパンツスーツだったから。
もしかしたら…、何かを感じ取ってくれるかも…?
その僅かな“願いを込めて”、華やかなライトベージュのスーツを選んだけれど。
自分で試すような危険な賭けを仕掛けておいて、落ち込むとは甚だしいよ…。
シンと静まり返る車内に漂うのは、ふわりと花舞うホワイトムスクの香り。
彼が隣にいるという安心感を齎してくれるのに、同時に寂しく思えるの…。
1週間前まで、蕩けるようなキスと香りに酔いしれていた事実は消失し。
手を伸ばせば届くキョリ…、けれど今はただの秘書という事実に蝕まれて…――
「佐々木さん、今日のスケジュールは?」
「え…、あ、少々お待ち下さいませ!」
すると愛しい声で尋ねられて、ギュッと握り締めていたバックを探り始めた。

