続きは、社長室で。2



専属運転士さんと私と拓海…、3人で構成されている密室空間の中。



少し伏し目がちに、チラリと隣に座る拓海の表情を窺い見てしまう…。




光沢を放つシルバーのネクタイを締めて、圧倒的なオーラを纏いながらも。



ダークグレイのストライプスーツで、整った顔立ちを際立たせている拓海。




けれど…、やっぱり私の“変化”には気づいてくれナイ・・・




いつもは拓海の指示を受けて、秘書にしては地味なパンツスーツだったから。



もしかしたら…、何かを感じ取ってくれるかも…?



その僅かな“願いを込めて”、華やかなライトベージュのスーツを選んだけれど。



自分で試すような危険な賭けを仕掛けておいて、落ち込むとは甚だしいよ…。




シンと静まり返る車内に漂うのは、ふわりと花舞うホワイトムスクの香り。



彼が隣にいるという安心感を齎してくれるのに、同時に寂しく思えるの…。




1週間前まで、蕩けるようなキスと香りに酔いしれていた事実は消失し。



手を伸ばせば届くキョリ…、けれど今はただの秘書という事実に蝕まれて…――





「佐々木さん、今日のスケジュールは?」


「え…、あ、少々お待ち下さいませ!」


すると愛しい声で尋ねられて、ギュッと握り締めていたバックを探り始めた。