続きは、社長室で。2



手を繋いだままに、エントランスへと足を踏み入れていく社長。



何度となく手を離して貰おうと試みたものの、なす術もなくて。



ささやか過ぎる抵抗はドアを前にして、呆気なく幕を閉じたのだ。





「しゃ、社長、おはようございます…」


「おはようございます!」


誰かの上擦った声を皮切りに、続々と始まった恒例の挨拶。




「おはようございます」


トップの風格はそのままに、笑顔を浮かべて返す社長。




その隣を行く私は、いつものように俯くコトしか出来ずにいた。



周囲からは当然の如く、好奇と嫌悪の視線が降り注がれていて。



どことなく圧し掛かるプレッシャーに、恐怖を覚えてしまうから。





“ちょっと、何あれ!?”



“何で手なんか繋いでるのよ!?”



会社に一歩足を踏み入れれば、中傷なんて日常茶飯事だけれど。



今までは秘書として、彼の背中を追う毎日だったから当然だね。




突然に社長と手を繋いで出社だなんて、不自然な光景だと思う。