拓海にとって今は幼馴染みでなければ、婚約者でもナイ…――



愛しいヒトから存在を失われた私が、傍にいられるのは秘書だけなの…。




すると暫く流れた沈黙のあとで、溜め息とも取れる深呼吸をされて。




「…コッチもバタついてる所だし、秘書として戻ってくれるのは助かる。

だけど・・・、本当にいいのか…?

自分が苦しむだけだろ…、記憶が戻るまでは・・・」


「いえっ、大丈夫です!

記憶を失っていても…、私は構いません…」


牽制されると分かっていたから、矢継ぎ早に思いを伝えたのだけれど。



「いや、でもな…」


うーん…と漏らしつつ、言葉が見つからないのか困り果てる桜井さん。



「また…、ゼロから始まるだけです!

拓海に好きになって貰えるように…、頑張ります、だから・・・」



私は絶対にキモチを伝えたり、表に出すコトは一切シナイ。



たとえ伏線を引いてでも、愛おしいヒトの傍にいる術を許して欲しいから…。





「・・・分かったよ。

今まで通り、拓海をよろしく頼むね?」


「っ…、か、かしこまりました!」


根負けしたような溜め息とともに、フッと一笑してOKを出してくれた。